新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」による感染拡大で自宅療養者が急増する中、初期対応に当たる医療機関の重要度が高まっている。東京都では本来、保健所が行う健康観察を一部の医療機関が請け負い、オンライン診療も活用して容体の急変を見逃さない体制づくりが進む。往診の裾野も広げるが、高齢者らに蔓延(まんえん)した場合、どこまで支え続けられるかの不安は尽きない。(三宅陽子)
東京都調布市の「西田医院」では西田伸一院長が外来の合間に、新型コロナの自宅療養者が専用サイトに毎日入力する体温や病状などの情報をパソコンで確認。必要に応じて電話をかけるが、症状に急な変化があれば、患者側から院長の携帯電話にすぐに連絡を入れるよう伝えてもある。
西田氏が健康観察を受け持つ患者は22日時点で48人に上る。ここ数日は1日7~8人の新規受け入れがあるが、「今のところ若年層が中心で、症状は発熱やのどの痛みといった軽症。2~3日で快方に向かうケースが多い」(西田氏)。
医療機関による健康観察支援は都が12日から開始。流行「第5波」では保健所業務が逼迫(ひっぱく)し、自宅療養者の症状悪化を招きかねないとの指摘があったことを踏まえ、陽性判定を行った医療機関がそのまま健康観察や初期治療を担い、入院の必要性も判断できる仕組みを整えた。すでに約1300の医療機関が参加意向を示しているという。
一般外来や往診もこなす西田氏が、懸念するのは今後の感染動向だ。感染者は無症状でも10日間の観察期間を要するため、都内で連日1万人の新規感染者が出た場合、単純計算で10万人弱の自宅・宿泊療養者が生じる恐れがあるからだ。
西田氏は「高齢患者が増えたとき、果たして軽症ばかりで済むのか。病床が逼迫してコロナ患者宅への往診が増えれば、難しい対応を迫られる局面が増えるかもしれない」と気をもむ。
保健所からの依頼で行う自宅療養者への往診が機能するかも、第6波を乗り越える上でカギとなる。
医療法人社団「悠翔会」(港区)には7日以降、かかりつけ医を持たない患者の健康観察や、外国籍患者のオンライン診療などが次々と舞い込む。高齢者施設でのクラスター(感染者集団)も出始めており、「往診依頼も散発的に入るようになっている」と佐々木淳理事長は話す。
同会は第5波で、都内や千葉県の自宅療養者451人の往診を担当。都内では165人が酸素投与が必要になる「重い中等症」以上と診断したが、約半数が自宅療養の継続を余儀なくされた。在宅での治療は、酸素やステロイド投与ぐらいしか打つ手がなかった。
その後、在宅でも使える治療薬の選択肢が広がったが、迅速で効果的な対応に結びつくかは不透明だ。
初の飲み薬「モルヌピラビル」は発症から5日以内の投与開始という条件があるほか、対象患者も限られる。高齢者らが飲むには薬剤の入ったカプセルが、やや大きいことも不安材料だ。別の点滴薬は「投与後1時間以上の経過観察が必要になる。対応が必要な患者が在宅にあふれた場合、難しい判断を迫られるかもしれない」(佐々木氏)。
オミクロン株は現時点で軽症者が多く、デルタ株に比べ、オンライン診療で対応可能なケースが多くなるとの見方もある。ただ、患者の中心が高齢者に移れば、地域医療を取り巻く状況は急変しかねない。「多くの人がワクチンの2回目接種から半年以上たち、免疫低下が懸念される。もっと早く3回目接種が始まってくれていたら」。佐々木氏はそう不安を口にした。
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