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Thursday, April 29, 2021

iモード全盛期からスマホアプリまで 20年のモバイルコンテンツと文化を振り返る:ITmedia Mobile 20周年特別企画(1/3 ページ) - - ITmedia

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 「iモード」の登場でモバイルコンテンツの市場が生まれてから20年以上の歳月が経過した。本誌創刊から現在に至るまでの約20年間で、携帯電話やスマートフォンがどのようなコンテンツや文化を生み出し、社会に影響を与えてきたのかを振り返ってみたい。

「着うた」が象徴する携帯電話とコンテンツの進化

 現在のITmedia Mobileの前身に当たるZDnet Mobileが創刊してから20年。当時筆者はゲーム会社でプログラマーをしていたのだが、直後に携帯電話向けのコンテンツプロバイダーに転職。それから数年にわたってモバイルコンテンツの現場で仕事をしていたこともあり、ライターに転身して以降もモバイルコンテンツ関連の取材には力を入れてきた。そこで改めて、この20年にわたってモバイルがどのようなコンテンツや文化を生み出してきたかを振り返ってみたいと思う。

 今から20年前の2001年といえば、携帯電話からインターネットサービスが利用できる「iモード」が誕生してから2年後という時期で、モバイル向けのコンテンツが急速に進化していた頃でもある。携帯電話のディスプレイがカラー化、そして大画面化したことでコンテンツの表現力が大幅に増したのに加え、同年には「iアプリ」がサービスを開始し、携帯電話でゲームなどのアプリが楽しめるなど、ハードとネットワーク、コンテンツの進化が明確にリンクして発展していたのがこの時代の特徴といえる。

503i 20年前の2021年1月に登場したNTTドコモの携帯電話「503i」シリーズは、国内では初めてアプリをダウンロードして利用できる「iアプリ」を採用。本格的なゲームが楽しめることなどで大きな注目を集めた

 それを象徴していたのが、2002〜2003年頃から始まった「3G」を活用したサービスである。1つはKDDI(au)が、レーベルモバイル(現・レコチョク)と協力して投入した「着うた」。30秒という制限があったとはいえ、着メロが主流の時代に生の楽曲を携帯電話でダウンロードして聴けることのインパクトは非常に大きく、2004年にはフルの楽曲を配信する「着うたフル」へと発展し、国内音楽配信サービスの要となって2010年頃までは音楽産業にとって必要不可欠な存在にもなっていたのである。

着うた KDDIはauブランドで、2002年に「着うた」のサービスを開始。30秒の短尺だった当時から音楽配信を見据えていたようで、2004年にはフルの楽曲を配信する「着うたフル」を開始した

 そしてもう1つは、2004年にNTTドコモがサービスを開始した「デコメール」である。画像をふんだんに活用してメールを飾り立て、従来の絵文字の枠を超えた表現ができるデコメールはグリーティングメールの定番となり、幅広い層に利用されるようになった。2006年にはその仕組みを活用して、画像を絵文字として扱える「デコメ絵文字」も登場。メールの表現力向上に大きく貢献したのである。

デコメール NTTドコモが3Gサービス「FOMA」に対応した「900i」シリーズの投入に合わせて提供を開始した「デコメール」。3Gの大容量通信を生かした新しいコミュニケーションができることをアピールする狙いが強かった

 着うたもデコメールも、当時としては大容量の画像や音声を、3Gの大容量通信を生かして配信することで、新しい楽しみ方ができることをアピールするために提供されたもの。これらが3Gの普及をけん引するキラーコンテンツの1つとなり、日本での3Gサービスの普及を促していたわけだ。

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SNSやUGCなどが人気となる一方、さまざまな議論も

 だが2006年頃を境に、モバイルコンテンツの進化の方向性が大きく変わってくる。そのきっかけは、PCで人気となっていたSNSがモバイルの世界に入ってきたことで、この頃からディー・エヌ・エーの「モバゲータウン」(現・Mobage)や、PCからモバイル向けへと事業を大きくシフトしたグリーの「GREE」などが若い世代に爆発的人気となったのである。

GREE 当初PC向けのSNSとしてスタートした「GREE」だが、2006年にKDDIから出資を受け、同年11月にau向けの「EZ GREE」を提供開始。以後事業主体をモバイルへと急速にシフトしていくことになる。写真はKDDIコンテンツメディア事業本部長の高橋誠氏(当時)とグリーの田中良和社長

 これを機として携帯電話でも、利用者同士のコミュニケーションを重視したサービスの利用が急拡大。当時楽天が提供していた「前略プロフィール」(ザッパラスへの譲渡後、2016年にサービス終了)などが若い世代から絶大な人気を得ることとなった。

 また、「魔法のiらんど」(現在はKADOKAWAが運営)などのUGC(ユーザー生成コンテンツ)系サービスがモバイルで注目されたのもこの頃。それらのサービスから「恋空」「赤い糸」などいわゆる「ケータイ小説」の人気作が生まれ、映像化されるなどして一大ブームをもたらしたが、一方で従来の小説の概念とは大きく異なる内容や表現などを巡り、大論争が巻き起こったこともある。

魔法のiらんど ケータイ小説ブームの火付け役の1つ「魔法のiらんど」は、2010年にアスキー・メディアワークス(現・KADOKAWA)に買収されたが、その後も小説主体のUGCサービスとして継続。現在も継続的に小説などのコンテストを実施しているようだ

 だが当時、モバイルコンテンツは未成年の利用が多くを占めていたため、モバイル向けのSNSなどで犯罪やトラブルに巻き込まれるケースも起きていた。そこで親世代から、携帯電話でインターネットを使わせること自体が「悪いこと」という認識を持たれるようになり、それが2008年のいわゆる「青少年ネット規制法」(青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律)の制定、そしてフィルタリングの義務化などへとつながることとなる。

 この頃はまだモバイルでのインターネットを積極的に利用する層が若い世代に限定され、大人世代からの理解があまり得られていなかった。それに加えて大人の男女が出会う、いわゆる「出会い系サイト」が社会的に良い印象を持たれていなかったことも、厳しい目が注がれる背景にあったといえる。

 子どもとインターネットとの関わり方は現在も大きな社会課題ではあるが、現在では老若男女問わずモバイルでのインターネット利用が当たり前になるなど、社会環境は大きく変わっている(「マッチングアプリ」で大人が出会いを求めことが一般的になる時代が来るとは、当時筆者は想像もできなかった)。それゆえ、未成年へのインターネットに関するリテラシー教育も、「禁止」から「付き合い方を考える」方向へとシフトしているようだ。

スマートフォンのパラダイムシフトで人気サービスも激変

 だがそれ以上に劇的なパラダイムシフトが起きたのが2008年。日本でAppleの「iPhone 3G」が投入され、フィーチャーフォンからスマートフォンへのシフトが急速に進んだことである。

 スマートフォンシフトに伴って大きく変化したのが、1つにプラットフォームの運営主体がAppleやGoogleなど海外の事業者に移ったこと。そしてもう1つは、ユーザーがコンテンツに触れる接点がWebから、「App Store」「Android Market(現Google Play)」などのアプリストアに変わったことである。

 このことが、それまで栄華を誇ってきた着うたフルなど、従来型のモバイルコンテンツの多くに対し、市場崩壊ともいうべき大ダメージを与えることとなった。一方で、スマートフォンの登場によって利用が急拡大したサービスもいくつかあり、その1つがリアルタイムなコミュニケーションができるメッセンジャーアプリである。

 実際、日本では2011年、NHN Japan(現・LINE)のメッセンジャーアプリ「LINE」がテレビCMをいち早く展開したことや、表現力の高い「スタンプ」の採用などによって人気を獲得。その後「カカオトーク」(カカオジャパン)や「comm」(ディー・エヌ・エー、2015年にサービス終了)などとの競争を勝ち抜いて、国内では事実上、スマートフォンのコミュニケーションの標準としてのポジションを獲得するに至った。

LINE LINEは2011年にサービスを開始して以降、国内だけでなく台湾やタイなどでも利用者を急拡大。その顧客基盤を活用したビジネスを推し進めるようになった

 そしてもう1つはゲームだ。アプリによって高い表現力のゲームを提供できるようになり、コンシューマーゲームに匹敵する内容のゲームが増えたたことで市場が急拡大したのである。中でもガンホー・オンライン・エンターテイメントの「パズル&ドラゴンズ」は社会的現象をもたらす大ヒットを記録した他、SNSビジネスに陰りが出ていたミクシィが、2013年に提供開始した「モンスターストライク」の大ヒットで息を吹き返したことは、多くの人に驚きをもたらした。

モンスト スマートフォンゲームとして爆発的人気を獲得した「モンスターストライク」。2015年に実施したイベントで熱中症患者が続出する騒ぎが起きたことも、モンスト人気の高さを物語っている

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4Gの普及でスマートフォンがネットサービスの主流に

 そしてスマートフォンの普及とアプリによるコンテンツの進化は、大容量通信のニーズを拡大させ3Gから4Gへの移行を促すことにもつながった。そして4Gの普及は、コミュニケーションの在り方にも大きな変化をもたらしている。

 それは、データ量が大きい写真や動画などを活用したリッチなコミュニケーションサービスが主流の座を占めるようになってきたことだ。そのことを象徴しているのが、近年の「Instagram」や「TikTok」など写真や動画を主体としたサービスの人気であり、着うたで驚いていた時代から考えると隔絶の感がある。

TikTok 音楽に合わせた短時間の動画を投稿できる「TikTok」は、若い世代から絶大な支持を集めて2018年に大ブレーク、同年にはGoogle Playの「BEST OF 2018」などで賞を獲得している

 そしてもう1つ、スマートフォンと4Gの普及が大きく変えたのは、スマートフォンがインターネットの主流の座を占めるようになったことだ。先にも触れた通り、フィーチャーフォン時代ではインターネットサービスはPCから利用するのが“本流”で、携帯電話からの利用は“サブ”という認識の人が多かったが、スマートフォンと場所を選ばず高速通信ができる4Gの普及でその認識は大きく変化。今ではスマートフォンでの利用を前提にしたインターネットサービスが当たり前となっている。

 それに伴い、利用が広がったのが生活に密接したサービスで、「メルカリ」などのフリマアプリや、「PayPay」などのスマートフォン決済サービスがその代表例といえる。実はディー・エヌ・エーが携帯電話向けネットオークションの「モバオク」を開始し、モバイルで決済ができる「おサイフケータイ」が登場したのはいずれも2004年のこと。20年近くたってようやくそれらが一般的になったことを考えると、モバイルインターネットやサービスの社会的理解と認知が進んだことが、この20年における最大の変化といえるのではないだろうか。

PayPay 2018年末にPayPayが実施した「100億円あげちゃうキャンペーン」に端を発した、いわゆる“ペイ戦争”は、スマートフォン決済の普及を急促進した一方で、多くの会社が疲弊し再編が進むきっかけにもなった

「デコ電」からケースへ、端末を“飾る”文化にも変化が

 モバイルに関連するカルチャーとして、もう1つ注目しておきたいのが端末を“飾る”文化である。実は携帯電話を何らかの形で飾り立てて他の人と差異化するという行為は、長きにわたって定着しており、90年代に流行した「光るアンテナ」などもその一例といえる。

 では20年前、フィーチャーフォン時代に人気を博していたのは何かというと、「デコ電」だろう。キラキラしたガラス素材などを携帯電話に貼り付け、自分好みのデザインにカスタマイズするデコ電は、フィーチャーフォン時代に女性を主体として高い人気を獲得。当時街中には、携帯電話をデコレーションするショップが多数現れたほどだ。

デコ電 スワロフスキーのクリスタルなどを携帯電話に直接貼り付け、好みのデザインにカスタマイズする「デコ電」。折りたたみ型のフィーチャーフォンが主流となって以降、人気が急速に高まっていった

 だがそれも、スマートフォンの浸透とともに大きく変化することとなる。スマートフォンは折りたたみ型が主流だったフィーチャーフォンと比べ構造がシンプルなことに加え、当初は衝撃に弱くディスプレイなどが割れやすい端末も少なからずあったことから、ケースを装着して本体を保護することが一般的なものとなっていった。そこで新たに生まれたのが、デザインに工夫を凝らしたスマートフォンケースで飾り立てるという文化である。

 ケースはデコ電と違って付け外すだけで簡単に外観を変えられる上、デコ電のように手間がかからないことから、スマートフォンの普及とともに多種多様なスマートフォンケースが登場。若い女性だけでなく幅広い層の人達が、ケースでスマートフォンの外観をカスタマイズするという文化が定着した。

スマホケース スマートフォン時代に入ると、デザインのカスタマイズはケースが主流に。自在に着せ替えして外観を変えられるのが人気となり、非常にユニークなケースも多数登場した

 現在は4Gから5Gへの移行が本格化しつつあり、社会的にもモバイルネットワークの重要性がいっそう高まっている状況だ。それゆえ今後も形を大きく変えながらも、モバイルのコンテンツや文化は広がりを見せていくことになるだろう。次の20年、モバイルを取り巻く文化がどう変化していくのか、その動向を引き続き見守っていきたいと思う。

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