NTTドコモの「ahamo」に代表されるオンライン専用でお得な携帯3社の新料金プランの提供で、戦略の練り直しに迫られた楽天モバイル。その同社が打ち出したのが、1GB以下なら月額0円で利用できる段階制の新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」だが、その影響は携帯大手よりも別の所に及ぶ可能性が高い。
楽天モバイルが2021年1月29日に打ち出した新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」。新たに段階制の仕組みを採用したのが大きなポイントとなる
段階制プランで小容量のニーズ獲得に動く
2020年12月から2021年1月にかけ、携帯3社が新料金プランを発表して大きな注目を集めた。中でも注目されたのは、やはりオンライン限定で月額2000円台、かつデータ通信量20GBという非常に高いコストパフォーマンスを実現した中容量のプランだ。
その先駆けとなったNTTドコモの「ahamo」、LINEの基盤を活用したソフトバンクの「SoftBank on LINE」、そして基本サービスをよりシンプルにし、オプションを簡単に追加できる“トッピング”が特徴のKDDIの「povo」と、各社が持つリソースや特徴を生かし差異化を図っているようで、いずれも好評を得ているようだ。
その一方で、それらの料金プランの影響を大きく受け、不利な状況に立たされているのが楽天モバイルだ。同社は2020年4月の本格参入時より、月額2980円という料金ながら自社エリア内であればデータ通信が使い放題の料金プラン「Rakuten UN-LIMIT」を提供。従来の携帯大手の料金プランより大幅に安いことを武器として契約獲得を進めてきた。
だが、各社が月額2480〜2980円とほぼ同額の料金プランを発表。データ通信量は20GBと楽天モバイルより少ないものの、エリア整備途上の楽天モバイルと比べ圧倒的にエリアの充実度が高いというメリットがある。もちろん楽天モバイルもエリア整備を積極的に進め、2021年夏頃には人口カバー率96%を突破する予定としているが、それでも既に99%以上のエリア整備を進めている携帯大手には当面敵わない状況が続く。
そうしたことから料金面で差のなくなった楽天モバイルが一転して不利となり、3社のプランに楽天モバイルがどう対抗するか?という点が注目されていた。そこで同社は2021年1月29日に発表会を実施。Rakuten UN-LIMIT VIを打ち出した。
Rakuten UN-LIMIT VIの大きな特徴は、従来の使い放題の仕組みに加え、新たに段階制の仕組みも設けたこと。自社エリア内で月当たり20GB以上利用する場合は従来通り月額2980円だが、3GBから20GBまでの場合は1980円、1GBから3GBまでの場合は月額980円。1GB以下の場合に至っては0円、つまりユニバーサルサービス料以外の料金がかからないというのがサプライズポイントとなるだろう。
Rakuten UN-LIMIT VIは自社回線で月当たり20GB以上利用すれば従来通りの料金がかかるが、1GB以下の場合は0円となる
総務省による携帯4社のサービス利用者への調査では5GB未満の利用者が7割近くを占めるとのことから、楽天モバイルは小容量のニーズに応えるべく段階制を採用するに至ったと説明している。ahamoへの対抗だけでなく、より少ない容量を求める層にもアピールできるよう料金の幅を広げる狙いがあったようだ。
もう1つ、1GB以下の料金を0円にしたのには、同社が現在展開している300万人に向けた無料キャンペーンが影響しているといえそうだ。無料キャンペーンは適用期間が1年間なので2021年4月には終了するユーザーが現れ始める。それを機として無料目的で契約していた人が解約してしまう可能性があることから、流出を防ぐため何らかの形で月額料金が0円になる仕組みを設けるに至ったのだろう。
エリアの優位性を保つ大手3社への影響は軽微か
0円から利用できるという一定のサプライズがあった楽天モバイルの新料金プランだが、その影響が大手3社の新料金プランにどの程度影響をもたらすのかというと、基本的にあまりないと考えられる。
実際、KDDIの代表取締役社長である高橋誠氏(漢字ははしご高)は、同じ2021年1月29日に実施された決算説明会で楽天モバイルの新料金プランについて問われた際、発表直後で把握しきれていないと断りながらも新たな施策を検討するという話はしていない。基本的には同社が打ち出した新料金プランで対抗する方針のようだ。
その理由は1つに、楽天モバイルに対してはやはりネットワーク面で圧倒的な優位性があることから、料金面で無理に追随する必要がないということだろう。楽天モバイルの契約者は現在、無料キャンペーンを目的としたサブ回線での利用が多いとされており、元々3社から楽天モバイルへの流出が少なかったという実績も、大手3社が動かないと見る根拠の1つである。
そしてもう1つは、とりわけKDDIとソフトバンクは「UQ mobile」「ワイモバイル」というサブブランドを持っており、低価格帯ではそちらの競争力が強いことが挙げられる。両ブランドはネットワーク面の優位性に加え、店頭での契約だけでなくサポートも受け付けているなど、楽天モバイルより充実したサービスを提供していることから、そちらの新料金プランで十分対抗できるとの考えがあるのではないだろうか。
KDDIは「UQ mobile」ブランドで小容量プランを提供、「くりこしプランS」は3GBで楽天モバイルより500円高い月額1480円だが、その分店頭での契約だけでなくサポートも受けられる
一方、NTTドコモは低価格のサブブランドを持っていないが、同社の顧客は年配層が多いことを考えると、流出を懸念するのは楽天モバイルより、シニアの獲得にも力を入れる2社のサブブランドであろう。NTTドコモは低価格帯向けの取り組みを打ち出していないことから、楽天モバイルへの対抗も含めどのような策を打ち出すかは引き続き注目される所だ。
NTTドコモは小容量プランに関して自社ではなく、他社のMVNOと連携して取り組むとしているが、まだ具体策は打ち出されていない
からの記事と詳細 ( 「1GB以下なら0円」で携帯大手3社に対抗する楽天モバイル--MVNO含めた各社への影響は - CNET Japan )
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