
■WHOは「冬の最低室内温度として18度」と勧告 寒くなってきても、これくらいなら耐えられるからと、暖房器具を利用することをつい控えていないだろうか。 【この記事の画像を見る】 しかし、それでは健康を守れない。 2018年11月に発表された「WHO 住宅と健康に関するガイドライン」では、「冬の最低室内温度として18度」(高齢者や小児はさらに暖かく)と勧告された。国内の大半の家は、何もしなければこの室温に達しないことがわかっている。 長年、住宅と健康について調査研究を続けてきた慶應義塾大学理工学部の伊香賀俊治教授も「寒いのを我慢しないこと」と強調する。 「いろいろな家を訪問していると、国内では驚くほど寒い家が多いんです。住んでいる方は、冬だからこれぐらい寒くても当たり前、ずっとこういう生活だったからと言います。でも室温が低い環境で生活し続けると、血管に負担がかかって病気のリスクが高まり、年齢を重ねるほど健康寿命に影響します」 18度を下回ると循環器疾患、16度を下回ると感染症などの発症や、転倒、怪我のリスクが高まるという報告が数多くある。そのほかにも脳の若さや咳の症状、頻尿リスクなど、室温は体に多くの影響を与えているのだ。 光熱費の心配より、健康のために暖房器具を使うことを意識しよう。
■空気を汚さずに暖房力があり、月々の電気代が低コスト それでは、どういった暖房器具を使うといいか。選ぶ指標としては、空気の汚染、暖房力、コストが挙げられるが、総合的に優れているのはエアコン。空気を汚さずに暖房力があり、月々の電気代が低コストであるためだ。一級建築士の加藤真哉氏はこう語る。 「エアコンは『ヒートポンプ』という原理で、投入する電気エネルギーよりも多くの熱エネルギーを使うことができるのです。しかしエアコン以外の電気を使う暖房設備、例えば電気ストーブやオイルヒーターなどは、エネルギー消費量がとても多くなってしまいます」 こたつも、小さな空間だけを暖めるので発熱量(消費電力)が電気ストーブやオイルヒーターの半分以下であり、うまく使えば省エネになる。 だが、小さなホットカーペットやこたつなどのような部分的に暖めるものよりも、エアコンやオイルヒーターなど、室内全体を暖めて室温を上げるもののほうが健康の観点からはいいだろう。 ■室内が湿度過剰になって、結露やカビができてしまう 反対にできる限り避けるべきなのは、石油ストーブなどの開放式燃焼器具だ。暖房力は強いが、いわば部屋の中で“焚き火”をしているようなもの。加えて室内にカビを発生させやすい。 日本エネルギーパス協会代表の今泉太爾氏は、“暖房加湿器”と表現する。 「石油ストーブは燃焼時に水分が出るのです。そのため室内が湿度過剰になって、結露やカビができてしまう。燃焼時には一酸化炭素など有害物質も一緒に発生するため、定期的な換気が必須になります」 ただし、石油ストーブの中でもFF式と呼ばれるものは燃焼ガスを給排気筒から室外に排気するため、湿気を出さず空気も汚さない。 エアコンを使う前にはフィルターを掃除してから使おう。エアコンそのものは空気を汚染するものではないが、夏の冷房使用後にカビが生えやすいため、そのままの状態で冬も使用すると空気が汚れやすい。最近はエアコンと空気清浄機が一体化しているものもあるので、検討してもいいかもしれない。
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