
【鹿児島】水俣病被害者救済法(特措法)に基づく国による健康調査に向け、国立水俣病総合研究センター(国水研、熊本県水俣市)が取り組んでいる水俣病の「客観的な診断法」についての研究報告会が11日、同市であった。参加した患者・被害者団体が「手法確立」の時期的なめどをただしたが、研究者は明言しなかった。
被害の広がりを明らかにするため、不知火海沿岸住民に対する健康調査の実施を、患者側はかねて求めてきた。2009年施行の特措法は、沿岸住民らの健康調査について「政府は積極的かつ速やかに行う」と規定し、調査のための「手法の開発」も定めた。
国水研は脳から発生する磁気を測る脳磁計(MEG)と磁気共鳴画像装置(MRI)を使って、水俣病を含むメチル水銀中毒の客観的な診断法の確立に取り組んできたが、特措法から11年たっても実用化に至っていない。
客観的診断法について、小泉進次郎環境相は9月の会見で「開発の可能性が見い出されてきた」と言及。また、1~2年をめどに「研究成果を整理する」と方針を示したことを受け、研究の現状を説明するこの日の報告会が開かれた。
国水研の中村政明・臨床部長は、MEGとMRIの検査法を詳細に説明。これまでに認定患者42人(50~80代)を調べた結果、水俣病の典型症状である感覚障害などの原因となる脳の異常が確認された「感度」は、73・8%(31人)だったと報告した。
小泉環境相の発言を踏まえ、参加者が「1~2年で調査に使えるめどが立つのか」と尋ねると、中村部長は「外部の医療統計などの専門家の意見を頂く必要があり、この場で答えられない」と明言しなかった。また、「調査の実用化に至るには何%の感度が必要か」との質問に「研究目標では75~80%以上だが、実用化は専門家の意見を聞いて検証したい」と話した。
この研究をめぐっては、患者側や水俣病を研究してきた医師らから「被験者が(厳しい基準のもとで認定された)『患者』に限られており、広範な被害の切り捨てにつながる」「1人あたりの検査時間が長く、大規模調査に向かない」との批判もある。(奥正光、奥村智司)
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