手術で使う医療機器をパッケージ化し、ネットワークでつないだ医療システムを「スマート治療室」という。オープンMRIやロボット手術台、手術ナビゲーションシステム、手術顕微鏡など約20種類の機器が相互に接続され、術中の患者の状況などの情報をリアルタイムで整理統合できるのが特徴だ。
国内の5大学と11企業で開発されたスマート治療室「SCOT(スコット)」は、旧型を含めすでに国内10施設以上の医療機関に導入され、これまで200例以上の手術が行われている。開発の中心人物である東京女子医科大学・先端生命医科学研究所の村垣善浩教授はこう話す。
「IoTを活用しているSCOTの利点は、手術の精度や安全性が高まるだけではありません。手術の全ての情報がデジタル化され、記録が集積されます。将来的にはビッグデータとして解析し、医療水準の向上に役立たせたり、AI(人工知能)を活用した術者のサポートなども行うことが可能になります」
SCOTの技術は、さらに進化しつつある。それは「5G」(第5世代移動通信システム)と組み合わせること。「超高速」「超大容量」「超大量接続」「超低遅延」が特徴の5Gを用いて術中のSCOTの情報を転送すれば、高度な遠隔手術支援が可能になるのだ。
東京女子医科大学とNTTドコモが共同で進めているのが、この遠隔手術支援システムと移動型スマート治療室「モバイルSCOT」の実用化。2020年10月から21年3月の期間で、ローカル5G(商用の自営網)を使った実証実験が行われている。モバイルSCOTとは、大型トラックの内部にSCOTの機能を搭載させたものだ。
「4Kカメラで撮影された手術中の映像などは、5Gで送れば遠隔地のモニターで見ていても自然に近い鮮明な画像で見ることができます。また、送信される情報のタイムラグもほとんどありません。ですから、その手術に精通する医師がその場にいなくても、適切な手術支援が行うことができるのです」
例えば、トップクラスの腕を持つ外科医が出張で不在でも、5Gを介して手術に立ち会うことができるわけだ。それは高速鉄道などで移動中でも可能という。モバイルSCOTは、災害時などで大いに役立つ。現場に急行した医師が、遠隔地の病院にいる熟練した専門医から5Gを介した支援を受けながら、その場で緊急手術ができるからだ。これは医師の少ないへき地での医療にも同じように活用することができる。
5Gを用いた遠隔手術支援は、2〜3年内に実用されるとみられている。医療の地域格差の解消、医療の均てん化につながることを期待したい。 (新井貴)
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